萬緑五月─新歓開幕─

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結局、笑ったことに不服そうにしながらも、西田先生が飲み物を入れた。 野田はそれを飲んだら少し落ち着いたのか、しばらくすると礼を言って帰っていった。 そもそも、このテントが何のためにあるかと言うと慣れない学年間での交流によるストレスや疲労に、体調不良になる生徒も少なくないから、という理由や不審者対策が挙げられる。 不審者とは、例えば身内から情報が漏れてしまった場合、富豪たちの跡継ぎに危害を加えようという輩のこと。特に、跡継ぎ争いがある所なんかは来たりする。何せここは屋外なので。 まあ、守衛さんのおかげで来ることなど無いに等しいのだが。 そうして、時々くる生徒に応えながらテントで過ごすこと、2、3時間。 特に何事もなく、木下の本日の仕事は終了した。 ──────────────── 「あ゛ーーーーーーーー、疲れた!!!」 「ああ、裕翔見回り班か。」 部屋に3人で入り、山形と木下がそれぞれベッドに倒れ込む。三宅は準備班で少し汚れたため気にしているのか部屋の椅子に座る。 新入生歓迎会では、教師も分かれて空きコテージに泊まる。しかし、下手をすればこの学園特有の”事件”が起こりかねない為、それぞれが同期や幼馴染など関係のあるものと3人以上で泊まることが決められている。 「風呂誰から入るー?」 羽織っていたジャケットをハンガーに掛けながら三宅が尋ねる。 「汚ぇからお前から、ほらはよ行け」 「木下お前、言い方考えろって義務教育で言われただろぉ!?なあ山形、どう思う!?」 「……」 「寝るなーーーーー!!!」 流石に疲れていたのか三宅もさっさと諦めて風呂に入り、木下が入った後に山形を引きずって入らせる。という作業を終え、明日の用意や寝支度を済ませた後に、3人揃って就寝。 そうして、あっという間に新入生歓迎会の一日目が終了した。 ──────────────── 2日目。 コテージでグループごとに朝食を済ませた生徒達が集合する。これから始まるのは、所謂宝探しだ。 ルールは単純、グループ内で海岸班と山道班に分かれ、それぞれ隠された宝を探す。中には食堂で使える券や、役職持ち生徒達の誰かにお願いができる券、クイズ・ミッション用紙など様々なものが入っている。 券が出たならそれはそのまま使え、クイズ・ミッション用紙が出た時はそこに名前が書いてある教師の誰かに答えを伝えるもしくはミッション達成を確認してもらえば、景品が貰える。という仕組みだ。 尚、名前が書いてある教師は各委員会顧問もしくは学年主任のみで、他の教師は見回りや景品管理の役割に当てられる。 つまり、俺の名前も書いてあるということで。大変めんどくさい事になっている。 「木下先生!クイズの答え!梅酒!」 「せんせーーー!!タップダンスです!」 「せんせぇー!鼻息荒い人!鼻息荒い人!」 「生足JKですかーーー??」 「おめぇら!先生は聖徳太子じゃねぇぞ!ということで聞いてください先生!!」 耳が。
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