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「おー!キノセンー!こっちこっち」
風紀に連絡して数分。
現場に外部班を向かわせたという報告の後に、木下へ風紀テントに来いという旨の連絡が来たため、木下は風紀本部テントへ来ていた。
「…おー、助かった。桐島。」
木下は目の前で椅子に座って机に頬杖をついている生徒─風紀委員本部委員長、桐島千紘─を見やる。
わはは、と快活に笑う姿と裏腹に、自他共に厳しく、仕事のできる生徒だ。
「いいよいいよ、本部クンだっけ?体裁っぽくてやばそーな案件だから外部の班長と副班長とばしといたよ」
「はっ!?ちょっ…オレ止めたやんな!?他にも起こるかもしれへんからどっちか残せって!!!」
「はは、血圧上がるよ、普」
「誰のせいやと思ってはる???」
運んでいた飲み物をおっことしそうになりながら、桐島にツッコんだのは風紀本部副委員長、三鷹 普。
「まあまあ、いざとなれば他の奴らも使えるしさ?大丈夫だって!」
「はぁ〜…もういやや……」
座った椅子の背もたれにもたれかかって溜息をつく三鷹に苦笑する。
大変な上司を持つと苦労も増えるものだな。
「あ、キノセンキノセン、今内部班が居場所見つけたって。外部班に連絡したからもうすぐ現場着くよ」
「よかった。ありがとう」
野々瀬学園の風紀委員会は本部、外部班、内部班の3つに分かれている。
本部とは、外内両班からの報告を整理し、全体もしくは各班に次の指示を出す、言わば司令部。他に、違反者への処罰の最終決定や、次期風紀委員の選抜等も行う風紀のトップ。
所属しているのは委員長、副委員長、補佐の3人となっている。
外部班とは、強姦や暴力沙汰の現場へと向かい、仲裁もしくは捕縛を行う班。また、その内容について本部に報告を行う。
外部班には、武道等の経験があり、また実力と実績が十分にある者が入る。
内部班とは、校内の状況や暴力などでは無い事件などの防止と抑制を行う班。被害が出た場合、速やかに原因を特定し内容を本部に報告する。又、外部班へ情報を提供したりする。
内部班には、コンピュータが得意な者や情報収集に長けているものが入ることが多い。
「ほらほら、キノセンも生徒の相手して疲れてるでしょ。ほらここ座りなさい」
「お前何目線だよ」
「ん?母親。」
「木下先生のお母様に謝れ」
「ごっごめんなさい!息子さん奪っちゃってごめんなさい!」
「そういう意味ちゃうわ!!!」
まるで事件が起きている最中とは見えない雰囲気に、木下は知らず知らずに握っていた手のひらを緩め、椅子に腰を下ろした。
本当によく出来た生徒なもので。
「あっキノセン、ほら来たよ。」
言われて目を向ければ、山道の方から、走ってくる人影がいくつか。
「おーーい、須賀ーー!」
よく見れば、風紀委員と思われる生徒の後ろを、本部が元気に走っている姿が見えた。
「桐島さん、連れてきました。」
そう言って、ででんと指を指したのは、積み重なった体格の大きめな生徒達と元気な本部、そして怯えた2人組。
「わは、どっちが加害者か分かんねぇや!」
「言っとる場合ちゃうねん!」
何が何だかよく分からないまま、事情聴取が開始された。
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