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休憩用テントへ、外部班の風紀委員数名と本部が向かうのを見送ってから、木下は肩の力を抜いた。
「とりあえず一件落着ってことでええかな」
そう言った三鷹は、普段の明るい雰囲気とは違う少し曇った表情をしていた。
しかしすぐに口角を上げて話し出した違和感を頭に置いて、木下は桐島達に向き直った。
再度感謝を伝えていると、加害者達を拘束し終えた外部班の生徒が桐島の方へ近寄った。
「桐島さん、拘束終わりました。」
落ち着いた雰囲気の生徒が縛った加害者達が、恐ろしい程にガチガチにされているのを見え、木下は目を逸らした。
「助かるわ、守衛さんのとこまで持ってって。」
そう委員長が言えば、須賀は頷き、ペコリと頭を下げて加害者達の首根っこを掴んだ。
「では。木下先生も頑張ってください。」
そう言って加害者達を引きずりながら去っていく須賀に若干苦笑いを浮かべながら、木下は返事をした。
「んじゃ、木下先生は一旦持ち場戻っていーよ。まだ終わるまで時間あるし生徒達のミッション終わらせたげないとさー?」
ニヤニヤと笑いながら言う桐島を軽く小突く。えんえん、と泣き真似をする桐島を少し離れたところで見ている三鷹の方へ足を向けた。
「本部はゲーム中断か?」
「んんん、まあ安全面考えてそうするのが最善なんで。気の毒やけど、今回のゲームに関してはとりあえず休憩テントでじっとしといてもらいますね。」
悔しがりそうだな、と考えながら頷く。
去ろうとした所、にしても、と口を開いた三鷹に再び足が止まった。
「あの転校生クン、思ってたのとちゃうんすね。あそこでもっと騒ぐかと思ってたら静かでビックリしました。」
首を傾げる三鷹に木下も同意する。
「ま、俺が踏み込めることとちゃうんで、委員長の指示がない限り調べませんけどね。」
そう言って話を終わった三鷹に、同様に感謝を伝えてから、木下は風紀テントを後にした。
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もとの場所へ戻っていく木下の背中を見送って、風紀本部副委員長の三鷹普はテントの椅子に腰かけた。
1つ、息を吐く。
「……かなわへんなぁ…」
呟いた言葉に沈むように、突っ伏した机に顔を隠して目を閉じる。
しばらくそうしていれば、各所への連絡を終えた風紀本部委員長、桐島千紘が背中を叩いた。
「普、お疲れ様〜。強姦じゃなくて良かったけど、衝撃の事件だったねー」
そう笑って話しかけてくる桐島に返事をしながら、三鷹は顔を上げた。目を開いた直後の独特な視界にも、明るい桐島の顔はハッキリと映る。
「…せやな。お疲れ様。」
いつまで囚われているのか。
馬鹿馬鹿しさに、もう一度息を吐いた。
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