萬緑五月─新歓開幕─

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『これより新入生歓迎会、閉会式を行います。』 うぉー!、とかきゃー!、とかアァー!やらが混じった悲鳴を教師席から見守る。 あんだけ宝探しした後なのに、元気なこって。 「若さって怖いねえ」 隣から聞こえてきた声にギョッとする。 見れば、林先生がニコニコと笑って話しかけてきていた。 「急に話しかけないでくださいよ…」 「およ、ビックリしちゃった?」 恐らく、切るのがめんどくさくて伸びている長めの前髪から除く目が愉快そうに細められる。 「木下くんってもしかしてお化けとかダメな感じなの?」 「いやお化けは大丈夫ですけど。」 「お化け…はってことは、他に?」 そう聞かれて、目を逸らす。 もう少し考えて口に出せばよかったと、木下は後悔した。 「…グロいのと、リアルなヤツはちょっと。」 そう答えれば、林先生はあからさまにニヤニヤとする。誰にも言うな、という圧を込めて見つめていると、右の席からチョップを食らった。 「い゙っ」 「式中に何やってんだお前らは。見つめ合ってんじゃねぇ。」 木下がゴリラ平井涼介によるチョップのあまりの痛さで悶絶している間に、何やら頭の上でバチバチとした空気を感じ取る。 頭を上げられないなと思っていたが、平井先生が上に腕を置いているらしい。やめろし。 「で?林テメェ何やってんだ?」 「やだなーもう木下くんと仲良くお話してただけだよう。ね?木下くん」 聞かれてやっと木下が頭を上げれば、そこにはニコニコとした林と眉間にシワを寄せた平井の顔。 「…えっと、そうすね、はい。」 「ほっら、木下くんもこう言ってるよ!諦めなって〜涼・介・君?」 そう言われた平井先生に顔を向けると、眉間のシワを更に深くした不服そうな顔で舌打ちをしていた。 少し離れた席から、井原先生に「そろそろ静かに」と声をかけられたこともあり、全員が前…舞台上に向き直る。今は、生徒会が挨拶している最中のようだ。 ふと、視線を感じた。 それが舞台上からであることに気づいた木下は、舞台上に立っている役員たちを見回す。 1人と、目が合った。 ────────────────── 『これにて、新入生歓迎会を終了致します。各クラスの生徒の方々は荷物を持ってそのまま寮へ戻って下さい。』 そう副会長のアナウンスを聞いて、生徒達がゾロゾロと歩き出す。 5月のイベントはこれだけなので、ここ最近多かった仕事も減るということに大半の教師が晴れ晴れとした気持ちになる。 かくいう木下も、生徒達が退場した体育館で思いっきり欠伸をしていた。 「お前あからさますぎだろ。自重は?」 「腹ん中。なんで新歓を週明けにやるんだろうな。週末にやれや……」 木下達は片付けの仕事も無いため、このまま帰って構わないということになっている。 本部の事や生徒会の事など問題は山積みだが、とにかく今は眠たかった。 もう一度欠伸をして、帰ったらシャワーしてさっさと寝よう。そう心に決めた。 こうして、2日間の新入生歓迎会が終了した。
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