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「ちわーお前ら今日の授業資料集使うぞー」
「え゛っ」
「……」
「嘘ぉぉおおおお!?」
「助けて山田ああああああ!」
2Sに入り、連絡するのをすっかり忘れていた持ち物を言えば、クラスの何人かが反応を示した。
肩を揺らす者、こちらを睨む者、叫ぶ者、隣のクラスへダッシュする者……
すると、生徒の1人がこちらへ近づいてきた。
「木下先生、昨日連絡を受けた持ち物にはそんなのありませんでした。要るならせめて朝には連絡して欲しいんですけど。」
「とか言ってお前は持ってるだろ?資料集は学校に置いとくのがオススメだぜ?」
「俺は今日自習するのでたまたま持ってたんです。オススメだかなんだか知りませんけど連絡位ちゃんとしてください。」
と、鋭い視線でこちらを射抜きながら淡々と話す生徒はこの2S学級委員長の三好 祐也、親衛隊持ち。紺の混じった黒髪と同じ色の目がマッチするクールな顔が麗しい…らしい。今の文はこいつの親衛隊隊長から聞いた者を暗唱しただけである。
こいつはまあなんというか…ちゃんとしている奴には普通、だと聞く。生憎俺はこいつの中の”ちゃんとしてない奴”認定なので尊敬した態度をとられたことなど1度もない。
「ま、次からは気をつけますよーって。とりあえず席つけ〜」
声をかければ、三好ははっと気づいたように時計を見て、自分の席へと戻っていった。
あいつ生きづらそうだよな。俺が決めることじゃないから知らんけども。
三好が席についたところで、始業のチャイムが響いた。
「委員長号令〜」
三好が少し低めの声を張って号令をかけた。
「起立、礼!」
「「「「「お願いします」」」」」
号令が終わった瞬間、バンッと音を立てて後ろの扉が開く。息切れして入ってきたのは茶髪の生徒。
「おい原田、お前授業遅刻カウントだからな〜」
「理不尽じゃないですかね!?俺A組移動だったしBもいないしCもいなくてDまで走ったんすよ!?」
原田 康太。2Sのムードメーカーである。
まあ1Sと違って他がアレだから少し空回りする時もあるが。
「おーお疲れ、んで借りれたのか?」
「俺よく考えたらD組交友関係無くて!」
「お前めっちゃ恥ずかしいじゃねえか」
「やめてくださいよ!!…まあでも俺ってそういうとこが可愛いんよな〜!」
沈黙。
おい、そこの奴カーディガン羽織ってやるな。
「おーし原田、この問題解け〜」
「俺も反省しました、その罰受けます。」
こいつもノリの良い奴で、2Sの空気が極度に悪くなって問題にならないのもこいつのおかげだと思う。
教師というのは考える事が多くてめんどくさい。なんで俺はこの職に就いたんだ……
「せんせー!俺これ分かりません!」
「よーし原田座れ、宮野代わりに解け〜」
「えっ僕!?」
宮野 亜紀。俗に言うチワワ顔だが、中身は常識もあるし謙虚でいい生徒だ。
ちなみに授業前に肩を揺らしていたので資料集忘れていると思う。
「宮野、スイッチ!」
「う゛…わかりました……」
いい笑顔で原田が宮野に言えば、宮野は項垂れながら黒板へと歩いてきた。
…まあ問題の方は、確かに難しい記述的なのを出したから、社会の苦手な原田は難しかったかもしれない。原田はバチバチの理系だから。
反対に、宮野はゴリゴリの文系なので御茶の子さいさいといったところ。
「お、正解。流石文系の宮野だな。」
「あ…りがとうございます。」
ただし、少し遠慮しすぎて気が弱くなってしまうのも問題かもしれない。特にこの学園、Sクラスなら。特定の人には僻まれてしまうかもしれないし。
それは、多分ここの担任も気づいてるだろう。俺を超える面倒くさがりだが能力はハイスペックだし。
そんなこんなで、本日の3限目が終了した。
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