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俺は思わぬところで中務室長と仕事が出来る幸運と、自分が責任者だと言われた事に対する高揚感で自分が興奮しているのを感じていた。
もちろん、1人で作業を進めないとならない不安はあったけれど、最終的に確認してくれるという一条の言葉に安堵している自分もいた。
「中務室長、よろしくお願いしますっ。」
「ああ、よろしく頼むな。」
歳の頃は一条さんと同じ位に見える。
中務室長の方が短髪で筋肉質な身体をしているからか、体育会系の先輩みたいだ。高身長の一条と並んでも遜色しない上背で、Tシャツにジャケットを着てよく大きなデイバッグを持ち歩いている姿は流石に技術屋じみているが、何か問題が起きた時に生じる渉外能力は抜きんでていて、彼が室長である所以でもある。
俺が自分としては丁寧に頭を下げると、中務は俺の頭をぐりぐりと撫でて「わはは」と笑った。
「澤辺は何だか犬みたいだなぁ。」
「俺コロコロしてますか?」
「いや、コロコロはしてないだろう、むしろ痩せ過ぎ。ただ何か素直で一生懸命な所が犬っぽいって事だ。」
「修、そろそろ仕事に戻って。俺も出張の準備もあってそれほど暇じゃない。」
「あっ、すみませんっ。」
機嫌の悪そうな一条の声にハッとなった。
出張前の打ち合わせなんて面倒な作業さっさと終わらせたいよな、と申し訳なく思う。
俺は中務にペコリと頭を下げ、一条に謝った。
「すみませんでした一条さん。お忙しいのに引き継ぎとか色々あるんですよね。俺が出張中の指示とかお願いしたから時間足りなっちゃって。」
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