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再度すみません、と言うと、一条はため息を吐き
「謝らなくていいよ。取り合えず俺がいない間はさっき言った案件進めて置いて。室長もくれぐれも頼みますよ。」
「ぐっ」っと何か喉に詰まったような音を中務は出して、しきりに首を振って肯定すると後すざりして去っていった。
「さて・・・修はちょっとこっちに来てくれる?」
「あ、はい。」
まだ確認することがあるのか、と大人しく一条の後ろを付いて行く。
辿り着いたのは備品などが置かれた倉庫と化している一室。
何か足りないものがあっただろうか、とドアを開けて待っている一条の前をすり抜けて部屋に入る。
その途端、一条は鍵を掛けた。
「ちょっ、何してっっ。」
「修・・・俺、明日から出張なんだ。」
「へ?ええ、そ、そうですね。」
「暫く会えないんだ。ちょっと許せ。」
ふわりと身体を包んだのは一条のどこか甘く香るフレグランス。
背後から優しく俺を抱き締めて囁く一条の声はどこか切羽詰まったものでもあった。
「なぁ、暫くこうやって触れることも出来なくなるけど、寂しい?俺に会えなくなるの、どう思う?」
「ちょっ、一条さんっ。ここ会社ですよっ。」
ドアの外は普段通り人が行き交い言葉を交わしている。
その日常と非日常のギャップにクラクラする。
「俺は寂しい。毎日修の顔が見れなくなるなんてやる気も何も出ない。あーお前も一緒に連れて行きたい。」
一条はそんな事を言って俺の髪に顔を埋める。
その感触がくすぐったい。
「ちょっ、一条さんって。」
「なぁ、修・・・もうそろそろ俺の事好きになった?お前の気持ち、どうなんだ?」
言葉に詰まる。
本音は・・・大分、いやかなり絆されまくっていた。
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