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 俺、澤辺 修(さわべ おさむ)は主にソフトウェア開発に携わる会社に勤務しているSEだ。 系列会社に大手ITソリューションベンダーがあって流れてくる仕事は多岐に渡る。 金融や医療、教育とありとあらゆる業界で様々なソリューションを手掛けているからこその仕事量。入社3年目に入った俺はようやっとそこそこ仕事を覚えたと言える状態だった。 中堅と言われる規模のこの会社は俺みたいな新卒上がりのSEだけじゃなく、実績をもったSEも中途採用で入社してくる。 俺とあいつーー 一条 篤(いちじょう あつし)は同期入社だ。 とはいえ、俺とは違い一条は中途採用枠で、以前別の会社で働いていたらしく、俺よりも4つ年上なのだと言う。 SEなんて日々の業務に追われ、深夜残業は当たり前、コミュニケーション能力が欠如している輩の集団だと思っていた。(というか俺がそうだから) そんな俺の予想を裏切り、一条は毎日清潔感のある服装で颯爽と会社に現れ、俺たち新人が頭を悩ませるコードをいとも簡単に組んでいく。 営業でもないのに、甘いマスクで微笑むとどうやら人好きする笑顔になるらしくもし相手が女性であったなら取引も円滑に進むと噂が立つ程だった。 それなら営業に配属されればいいのに、SEとしても優秀な一条を手放す上層部ではなく彼はずっとSEとして働いている。 チーム内ではプロジェクトマネージャーなど取りまとめ役をしているが本当はもっと上の役職でもいいのではないか、と俺なんかは思っている。 ++ そんな一条とは新入社員の研修合宿で顔を合わせた。
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