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「はっ、はいっ。わ、分かりましたっ。」 社会人としての心構えが出来ていないと指摘されたも同然で、俺はますます恐縮したように身を縮ませる。 「分かったら走らないで行っておいで。」 「は、はいっ。」 急ぎ足になるのは許して欲しい。そう思いながら俺は一条に背を向けてドアを目指した。 (何だよっ。分かってるよ、それぐらいっ。初日なんだからしょうがないじゃん。)  図星を指された事に不機嫌になる。受付の有無を確認しなかったのは自分だったし、研修は自分たち新人に必要最低限の社会人としての振る舞いを教えてくれる所でもあるだろう。 それを蔑ろにするつもりはなかったけれどああ言う言い方をされるのは気分が悪い。 ただ正当な事を言ってくれただけなのに、自分自身の不甲斐なさを見られたからか一条が途端に苦手な相手になってしまった。 (ま、一条さん見た目も良いし、きっと営業だろうからそんなに会う事もないだろう。)  元々希望は社内SEで、入社試験もSEに特化したものだったから恐らく自分が配属される部署とは別だろう。 俺はそう気持ちを切り替えて受付へと急いだ。 俺の後ろ姿をジッと見つめる一条の姿など知りもしなかった・・・。
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