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「おいおいっ、暴れるなって。」 それでも体格差で負けている俺は一条の腕の中から逃れる事が出来なかった。 「修、嫌?俺と付き合うの?考えられない?」 少し不安そうに俺にそう聞く一条の声に俺は動きを止めた。 「俺、ずっと修の事可愛いと思ってた。一生懸命で頑張り屋で。気付いたら好きになってた。男同士とか、年上だとか、そういうの考えて、やっぱりダメだってセーブしようと思うのに、気付くとお前が隣にいて、やっぱり好きでたまんなくなった。」 「一条さん・・・。」 「なぁ、考えてみてくれないか、本気で、俺と付き合うの。俺、こんなに好きだと思った相手、今までいなかったんだ。修・・・本当に好きなんだ。」  一条の事は嫌いではない。けれど男を恋愛対象と見たことは生まれてから一度もなかった。今まで可愛いと女の子を見て思う事はあっても、同じ同性を見て心がトキメク経験をした事がなかった。それなのに気付いたらキスを奪われて、一足飛びに求愛されているこの状況に俺は理解が追いつかない。 「やっ、あ、あのっ・・・。いやっ、で、でもっ・・・。」 口を開いて、「お断りです」とハッキリと言えたなら、ここから先に進む事などないだろう。 一条ほどの男なら、相手にその気がないと分かった時点で身を引くスマートさを持ち合わせていそうだ。 それでも、俺は何故か「嫌です」とは言えなかった。 人として憧れる存在が自分を好いてくれるという事実が単純に嬉しかったのかも知れないけれど。口ごもり、拒絶の言葉が言えなかった俺に一条がにんまりとした笑顔を浮かべて、 「じゃ、これからガンガン攻めるから。俺の事、好きになってもらうからな。」 と宣言した。 俺たちの始まりは、一方的に奪われた俺のファーストキスで幕を開けたのだったーーー。
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