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タクシーを見送った後、隣に並んだ山ノ内を見上げる。
「ありがとね、助かった。」
私がお礼を言うと山ノ内が・・・私にお金を渡してきた。
そのお金を見て笑った。
「いらないよ。
私がやりたくてやったことだから。」
「知り合い・・・ではないよね?」
「“人には金を使え”って、親から言われてるからね。
知りじゃなくても、“人”だから。」
そう答えると、山ノ内が優しい顔で笑う。
「葛西さんは?電車?」
「電車。」
「俺も。一緒に行こうか。」
「・・・なんでこの駅にいたの?
最寄り駅とか違うでしょ?知らないけど。」
「出勤前に葛西さんに会いに来た。」
それには、笑ってしまう。
並んで歩く山ノ内を見上げる。
「心配しなくても、山ノ内副部長と関係を持ったことは言わないから。」
「少し、話したくて。」
「それは結果が分かってからにして。
まだ日数的に分からないし、くるかもしれないから。」
そう答えながらも、手が震えた・・・。
震える手を隠すために、両手をコートのポケットに入れる。
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