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「あっ!戻ってきた!いらっしゃったぞ!」
会議室へ戻った二人のもとへ、各国の秘書官達が駆け寄ってきた。
「どういうことですか!?」
「どうなっているんですか!?」
「何なんですか!?」
我先にと言った様子で質問が大統領に飛んでくる。彼らは何とは言わなかったが、聞きたいことについてのおおよその察しは付いた。
「ええと……なんのことかな?」
しらを切ろうとする大統領の様子にしびれを切らし、秘書官の一人が「これをどう説明してくださるんですか!」と言いスマホを二人の目の前に差し出した。
「何だこれは!?」
怪獣である。
見慣れた白い建物と綺麗に整えられた緑の芝をバックに、たくさんの記者に囲まれている女性と男の子、と見慣れない大きな生き物が映し出されている。
今の今まで想像上にしか存在しなかった生き物が、突然現実に現れた。しかもその生き物は、愛する妻と息子と仲よさげに談笑している。
うまく状況が理解できない二人が唯一わかったのは、怪獣という生き物が、人間と会話をすることができるということだけだ。
二人と一体を映していたカメラが真ん中に立つ怪獣へと寄り、そのゴツゴツの大きな体と鋭い牙に似合わぬ爽やかな笑みが画面いっぱいに映される。
いつの間にか怪獣騒動は、国中、世界中の話題となっていた。首脳会談に集まった他国のリーダー達は、早急に軍や中央機関に指示を出し、それぞれの対策をとっていたらしい。
どうやら何の対応も行っていないのは、当事者の国。つまり、先延ばしグセのある彼だけであった。
「えーっと、みなさん、きいてください」
怪獣がカメラに向かって喋り出す。想像よりも高い、可愛げのある声だ。
「今からワタクシが、このクニのリーダーになります。それで、このしろいイエにすみます。明日からでも、後からでもなく、今から!」
そうカメラ目線で言う怪獣。その言葉は、異国の地でこの中継を見ているであろうリーダーもとい、元リーダーに向けられている。もう一度仲良く談笑する三人を映し、中継は終了した。画面が別のニュースに切り替わる間際、夫人のしたり顔が映ったのを二人は見逃さなかった。
もう会議どころではない。
「……ホワイトハウスに帰ろう……今スグ!」
「もちろんです!!」
そう言って二人は怪獣の国へと帰っていった。
後日、あの日できなかった首脳会談が開催されることとなった。
勿論、あの国の首脳の席には、特注の巨大な椅子が用意されている。
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