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首脳会議のために、海外に赴いていた大統領のもとに、随行していた秘書官が、青い顔をして近づいてきた。
「大統領、たいへんです。ホワイトハウスで怪獣が暴れているそうです。怪我人も、たくさんでている様子です!」
「何ということだ。早く手を打ってくれ!」
「大統領、お言葉ですが、この事態を収束できるのは、大統領ご自身しかおりません。すぐに大統領のお言葉を伝えてください」
大統領は、大きく深呼吸をして、落ち着いた声で話しはじめた。
「もしもし、私だ。そちらの状態を詳しく伝えろ」
電話の向こうの声に耳を傾ける大統領。その顔は真剣そのものである。
「わかった……少し待っていてくれるか?私からまた連絡する。それまでどうか粘ってくれ」
威厳のある声でそう言い切り、一度スマートフォンを耳から離し、ゆっくりと秘書官の方に向き直る。秘書官も緊急事態を乗り越えるための指示を国のリーダーから仰ごうと、彼の方をじっと見る。
しかし大統領は無言のまま。二人は見つめ合う形になり、しばしの沈黙。
「……え?」
「ん?」
「はい?」
秘書官が沈黙を破った。綺麗なブルーの目を大きく見開き、首を傾げている。
「えっと……お言葉は……?」
「何がだ」
「怪獣へのです!電話で聞いたでしょ?」
「もちろん聞いていた」
「ならば大統領。先程も申し上げましたが、この事態を収束できるのはあなたしかいないんです!さあ!早くお言葉をお伝えください!」
青ざめていた顔を、今度は真っ赤にして懇願する秘書官を一瞥し、大統領は溜息を一つついた。そして、神妙な面持ちで重い口を開いた。
「……首脳会議、終わってからでいいか?」
「出った~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
会場内に突如として響き渡る大声に、何事かと各国の要人達の視線が一斉に二人に向く。二人は何事もなかったかの様な表情を浮かべながら、会場を見渡す。現在、ホワイトハウスで起こっていることを知っているのは、会場の中で彼ら二人だけだ。
「場所を変えましょう」そう言って会場から静かに外へと出た二人は、広大な庭の隅の日陰に陣取った。
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