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いつの間に自室のベッドで寝ていたのだろうか。微睡みから目覚めて第一に思ったのはそれだった。
見知った天井から自室のベッド上というのは解るが、ここで眠りに就いた覚えはない。
少年──カストール・ジェミニは小首を傾げながらも痩躯を起こす。何だか、体がとても気怠い。
──……寝た覚え、ないんだけどな……。
暫く記憶を巡る。
今日は確か、起床後すぐに書庫室に行って黙々と勉強をしていた。その後、その後は……。
それから先の記憶は何故か霞みがかっており、辿るのは困難だった。思い出すのを早々に諦め、ベットから下りる。
乱雑に本が積まれ、少々整理整頓がなっていない自室を見回し、ふと残された可能性を口にする。
「もしかして……ポルクスが連れてきてくれたのかな?」
この屋敷で共に暮らす、自分と瓜二つの双子の少女──ポルクス・ジェミニ。
様々な知識を持ち合わせている彼女は、カストールにとって実に頼りになる存在だ。
頻繁に書庫室で夜遅くまで勉強し、寝落ちしてしまうカストールを自室まで運んでくれるのも彼女だった。
恐らくポルクスが、いつもの如く書庫室で勉強しながら眠ってしまった自分を運んでくれたに違いない。そう決定づけた。
ともすれば、感謝の意と謝罪を言わねば。毎日毎日申し訳が無さすぎる。
自身の集中力の無さに何とも言えない気持ちになり、溜め息を一つ。ふと、窓の外を見遣る。
眩い星々が、煌々と彩色豊かな光を放っていた。外は満天の星が輝く夜。……のように見えるが、この世界──アストラでは常に夜空なので昼夜の判断が難しく、一瞬では見分けがつかない。
窓の縁まで近寄り、夜空を見上げ、ポルクスに教えてもらった昼夜の見分け方を実践する。
──三つの大きな星が上なら昼、左なら夕方、無かったら夜……。
一際輝く星を探す。すると、左側に他の星とは比べ物にならない煌々とした光を放つ三つの星を見つけた。
正三角形を象る星々を確認し、今は夕方だと判断できた。自分が活動していた記憶は朝方。どうやら、相当眠っていたようだ。
眠ったら中々目覚めない体質だからといっても幾ら何でも寝すぎだ。自分の体質に嫌気が差しながらも、カストールは窓から離れた。
ポルクスにここまで運んでもらい、あまつさえ夕方まで眠りに耽ってしまうという愚行を謝らなければ。そう思い、自室を後にする。
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