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さっきまで妻だと思っていた小娘から「今更」「迷惑」「犯罪者」「出て行け」「通報する」等が散りばめられたlovelessな息を浴びせられた。
「産まれた子供を抱かせてくれよ」
俺は頼んだ。
「そんなもん最初から居ないわよ!」
開き直った女狐は悪態を続ける。
「俺のコレクションの酒たちは?」
「あんなもん売っちゃったわ。帰って来ないと思ってたし」
気を失った間男が立ち上がろうとしたので鳩尾を蹴ってもう一度眠らせた。
俺は静かなる怒りを表明するようにダイニング上のクリスマスの準備たちを薙ぎ払い床にぶち撒けた。そしてドン底の気持ちをアルコールで紛らわせたくてハブ酒の瓶の蓋を開け直飲みしようとした。液体より先に飛び出して来たのはハブだった。泡盛の中で生きていた蛇は俺の鼻っ柱に噛み付いた。仰天した俺は瓶を落とし、床に転げ回ってハブを取ろうと暴れた。
俺の突然の独りコントに驚く小娘は、床に落ちた果物ナイフを見つけ拾って言った。
「待ってて、助けてあげる!」
「危ないからよせ!」
俺は叫んだ。けれど奴は俺を助けようと果敢に蛇に向かって刃を振り下ろした。
ナイフが刺さったのは俺の右目だった。抜かれたナイフは左目も貫いた。俺は瞳から流れる血を両手で抑えた。鼻先のハブの姿を感じなかった。
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