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そうなると自分たちの身の丈に合っていないどデカい計画を提案してくる無謀な馬鹿が出てくる。その輩が提案したのは、要人暗殺事件との関わりでクローズアップされた、信者の御布施で歪で巨大なバケモノに膨れ上がったカルト宗教団体の地下資金を根こそぎ頂戴し、諸多の宗教詐欺被害者に還元するのを目的としたサイバーテロだった。
「俺たちは慈善事業団体じゃねえんだぞ。現場に出た事もねえガキが!」
俺は最近加わったハッカーかクラッカーだか名乗る歯磨き粉か菓子のような肩書きの若僧に吠えた。
「伝説の銀行強盗事件を成功させた先輩の偉業は耳にしてますが、今はカビ臭い金庫に現金を隠し持つ時代じゃないんですよ。電子で暗号資産化されて昔気質さんにはアンタッチャブルだと思います」
そう返されて、俺は返す言葉がなかったが、でもそれを奪うことが出来るんなら、とっくに他のアノニマス連中がやってる筈だ。
「仲間内で揉めるのやめなさいって」
そう言いながら仲裁したあの日のボスのスタイルはフィリップ・マーロウだったらしいが、「三つ数えろ」のハンフリー・ボガートなのか「ロング・グッドバイ」のエリオット・グールドなのか俺の記憶が定かではないので分からずだが。
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