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今だに秀臣が持つスマホの画面を観て唸る和音に、秀臣がにっこりと笑いかけた。
「じゃあ俺達も、メンズバレンタインデーしてみます? 折角今日知れたんだし、楽しそうじゃあないですか?」
「え……? え!?」
二人はれっきとした独身であるのだが、お互い左手の薬指にはお揃いのリングがはめられていて、カーテン越しの朝日に照らされ、それがきらきらと輝いているのだ。
リビングの一番目立つ壁には、豪華な額縁に入った、二人の名前が記入済みの婚姻届が飾られている。
そんな秀臣が、和音に、メンズバレンタインデーをしようとわざわざ言った。
言われた和音は、思考が俄に追いつかなかった。
会社では切れ者と名高い和音も、恋人の前では遠慮なくいつもは隠している弱みも曝け出しているせいで、時折ピュアな反応をしては秀臣を無意識の内に萌えさせていた。
徐々に意味を理解してきた和音の顔が、自分でも真っ赤になっていくのが理解る。
そんな和音の変わりようを、意地悪な笑みを浮かべながら見詰めていた秀臣が続ける。
「和音さんが恥ずかしいなら止めますけど」
「え。だって下着って。それって、だって」
記事を鵜呑みにしているのか、はたまたテンパっているのかは知れないのだが、どうやら和音は、秀臣が女性モノの下着をプレゼントするつもりらしいと、そう受け止めているようだ。
和音ならば何を着用しても似合うだろうなぁと、一通り反応と、脳内でその姿を堪能してから返す。
「俺は普通に下着をプレゼントするつもりなんですが?」
「……え。か、からかったのかよ!」
女性モノの下着をプレゼントするとは、初めから言っていないし。勿論からかってもいないのだが、憤った様子の和音を見て更に萌える秀臣である。
何とも初々しい反応だ。
めっちゃ愛でたいと、今すぐいちゃいちゃしたくなる衝動を、内心で必死になって抑えている。
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