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「ふ、普通の下着? マジで? からかってない?」
「和音さんの事はからかいませんよ」
男性から愛を伝える日なんでしょう? そう続けた秀臣が、ぎしっと座っているソファのスプリングを軋ませながら、和音の至近距離まで接近する。
そうして優しい手付きで抱き締めると、耳元で囁いた。
「大好きですよ、和音さん」
「……は、恥ずかしい」
二人の距離が時間をかけて縮まっていく内に、和音は耳が弱いと知ってしまった。
だから、全身全霊の想いを込めて伝える時は、必ず耳元で囁くようにしているのだ。
「お、俺も、好き」
和音も応えるように、抱き締め返してくれた。
メンズバレンタインデーという日を調べている訳ではなかった。
貴重な二人揃った休日に、どこか出かけるのに良い場所はないかと、スマホで調べている内に、偶然にも目にしてしまっただけなのだ。
それが思いがけず功を奏し、早朝から愛しい恋人といちゃいちゃ出来る雰囲気にまでなれるとはと、秀臣にとってはメンズバレンタインデー様々であった。
……まぁ、内容だけ読めば狂気の沙汰のイベントだと、頭の片隅では思ってしまうのだが、の話ではある。
普通に考えて、男性から女性に下着をプレゼントなんて、それこそまさに「ただし、イケメンに限る」を王道で行く、とち狂った行為でしかないと思うのだが……。
まぁまず、女性側が意中の相手からもらう物でないと、間違いなく「変態!」とか罵られて終わりな気がする。
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