第一章・ーメンズ・バレンタインデーー

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 それでなくとも下着とは、本来女性のデリケートな部分であろうと思うのだが、世の中には本当に、そんなんをプレゼントされて喜ぶ人がいるのだろうかと、甚だ疑問でもあった。  だが、自分達ならばメンズバレンタインデーとやらを決行しても大丈夫だろうなぁと考えての提案に、和音の方も思いの外食いついてくれた。  これは今日のデート場所、決まったなと、内心でガッツポーズをしてしまう秀臣であった。 「……えーと。じゃあ、そうと決まれば早いとこ支度して、デートに出かけましょうか? 天気も良いし。絶好のメンズバレンタインデー日和ですよ」  からかい口調で言ったつもりだったのだが、和音は余程嬉しかったのか、素早い動作で秀臣から離れると立ち上がり言った。 「分かった。秒で支度してくる」 「はい。待ってますよ」  和音がキッチンで後片付けをしてくれている間に、秀臣はもう出かける支度を整えていた。  だからこそスマートに案内しようと、スマホでデート場所を調べていたのだが、和音はまだであったから、素早く部屋に戻って本当に秒単位の如く、着替えて帰ってきた。 「待たせた!」 「めっちゃ早いですね」 「だって、いちゃいちゃ! メンズバレンタインデーするんだろ!?」  ……この様子だとまだ、女性モノの下着をプレゼントされるとか思い込んでいないか……? とか、一瞬考えた秀臣であったが、先刻の会話で誤解は解いた筈だし、まさかそこまで和音が天然ではないだろうと思い直す。  さすがにそんなんでここまで喜ばないだろうと、能天気な秀臣は高を括っていたのだが、数時間後には「それは淡い幻想だったんだな……」とか遠い目をせざるを得ない状況に陥ってしまう。  そんな未来を、秀臣はまだ、知る由もなかったのだったーー。
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