2人が本棚に入れています
本棚に追加
それでなくとも下着とは、本来女性のデリケートな部分であろうと思うのだが、世の中には本当に、そんなんをプレゼントされて喜ぶ人がいるのだろうかと、甚だ疑問でもあった。
だが、自分達ならばメンズバレンタインデーとやらを決行しても大丈夫だろうなぁと考えての提案に、和音の方も思いの外食いついてくれた。
これは今日のデート場所、決まったなと、内心でガッツポーズをしてしまう秀臣であった。
「……えーと。じゃあ、そうと決まれば早いとこ支度して、デートに出かけましょうか? 天気も良いし。絶好のメンズバレンタインデー日和ですよ」
からかい口調で言ったつもりだったのだが、和音は余程嬉しかったのか、素早い動作で秀臣から離れると立ち上がり言った。
「分かった。秒で支度してくる」
「はい。待ってますよ」
和音がキッチンで後片付けをしてくれている間に、秀臣はもう出かける支度を整えていた。
だからこそスマートに案内しようと、スマホでデート場所を調べていたのだが、和音はまだであったから、素早く部屋に戻って本当に秒単位の如く、着替えて帰ってきた。
「待たせた!」
「めっちゃ早いですね」
「だって、いちゃいちゃ! メンズバレンタインデーするんだろ!?」
……この様子だとまだ、女性モノの下着をプレゼントされるとか思い込んでいないか……? とか、一瞬考えた秀臣であったが、先刻の会話で誤解は解いた筈だし、まさかそこまで和音が天然ではないだろうと思い直す。
さすがにそんなんでここまで喜ばないだろうと、能天気な秀臣は高を括っていたのだが、数時間後には「それは淡い幻想だったんだな……」とか遠い目をせざるを得ない状況に陥ってしまう。
そんな未来を、秀臣はまだ、知る由もなかったのだったーー。
最初のコメントを投稿しよう!