恋する乙女

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どうやら木から降ってきた猫と、体と中身が入れ替わってしまったようだ。 「私は、ねこねこ王国。第6王女。マリエにゃ」 どこよ。なにこの急なファンタジー展開は。 私の体であるマリエは、王女らしく胸に手を添え、お辞儀をした。 「政略結婚をされられそうになり、地球に逃げて来たにゃ」 お前は猫の姿の地球外生命体なのか。 うん。ファンタジーに常識を求めてはならない。 「心に決めた猫がいるにゃ、その猫としか結婚しないにゃ。まさか、逃げた先で、こんなことになるなんて、早く元の体に戻らなきゃにゃ」 そうよ。早く戻って先輩に告白しなきゃ。 ──でもどうやって? こんな展開を昔、テレビドラマで見たことがあった。 たしか、階段から一緒に転げ落ちて、入れ替わるってストーリー。それを再現してやれば……。 まてまて。それは駄目だ。 人間と猫の体重差。 猫。踏んじゃった。 じゃ済まない。 猫。死んじゃった。 になりかねない。 真剣にバカげたことを考えているとマリエは猫の私を抱き抱えた。 「とりあえず逃げるにゃ」 「逃げるってなんで」 「追って来るにゃ」 「なにが」 「婚約猫が。」 一体全体なぜこんなことになってしまったのか。
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