恋する乙女

4/13
前へ
/13ページ
次へ
「マリエ。君はなんて素敵な猫なんだ。この猫じゃらしを受けとってくれ」 ハチワレ猫が塀の隙間から現れて、綺麗に包装された、猫じゃらしを渡して来た。 「いらんわ」 私は、ぽーいっと遠くに投げる。 ダダダダダ。 ハチワレ猫が、猫じゃらしを追いかけた。 猫まっしぐら。 「マリエ様。今日も一段と美しい。どうでしょう。私と今晩、またたび酒を飲みませんか」 虎猫がおぼつかない足取りで寄ってきた。 すでに、またたびに酔っている。 酔拳か。 だいたい。私は未成年。 ガシャン。 私はまたたび酒の入った壺を叩き割った。 ふにゃふにゃと虎猫は気持ち良さそうに寝てしまう。 私は四足歩行で走り、マリエを見上げた。 「マリエいったいなんなの、この猫たちは」 「さっきも言ったにゃ。婚約猫にゃ。父が選んだエリート猫にゃ。父が私の心を落とせば、出世させるなんて言ったから、近寄ってきたにゃ」 政略結婚。 好きじゃない人と結婚は嫌だよな。 それにしても来るは、来るは、乱闘のように、黒やら白やら茶トラの猫どもが 「結婚してくれ」 「俺の妻になってくれ」 「君と俺は結ばれる運命だ」 など薄っぺらい告白をくり広げてくる。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加