恋する乙女

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ばか ばか ばか ばか あほんだら! 私は闇雲に走った。住宅街を越え、塀の上を走り、人気の少ない道を走った。 涙がでそう。 猫になっても目頭が熱くなる。鼻までつーんとする。 なにもかも嫌になった。 そうして疲れると、私はとぼとぼ歩く。 大きな夕日が私を照らし猫の形の影を落とす。 「マリエのバカ」 あれ。ここ。 気がつけば見覚えのある公園に行き当たっていた。 嘘。私、無意識に先輩の家の近くの公園に来てた。 先輩の顔が浮かんだ。 『落合』 「うっう。先輩」 私の瞳から涙が落ちた。 ──キイ。キイ。 風に乗って錆び付いたブランコを漕ぐ音が聞こえてきた。 (おもむろ)に近づくと、ひとりの男の人の影が写る。 ブランコに乗った影が私に気がつき顔をあげ、こちらに向く。 先輩。 こんなところで先輩に会うなんて。 「お前も、ひとりぼっちなのか」 先輩は寂しげに猫の私に話しかけてきた。 私は先輩に近づき、そっと足に擦り寄った。 「人懐っこい猫だな。どこかの飼い猫か。ふふ。くすぐったいよ」 先輩は優しく私の頭を撫でてくれた。 ああ。先輩の手だ。
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