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往々にして、浮気発覚の場面なんて似たような状況になるもんだ。 浮気相手と腕組んで歩いてたり、キスシーンを見られたり、ラブホに入るのを誰かに見られてたり。中でも最悪なのは、浮気相手を部屋に連れ込んでイチャついてたら、たまたま来た本命とブッキングってやつかな。でもこれ、意外とよくあるんだよね。 俺や俺の悪友も、毎回似たようなバレ方してるよ。 本命でも親でも、無闇に合鍵渡すなって教訓だな。 俺、与座 瑛(よざ てる)、24歳。 俺は子供の頃からモテた。 それは多分、‪α‬だったから。 いやな、子供の頃にはベータ性は未だ確定が曖昧なんて言われてるけど、‪α‬の場合はそうでもないと思う。 ルックス、成長速度、頭の回転、運動能力なんかが周囲よりずば抜けたりしてて、早くから兆候が出るもん。 小学校高学年くらいには大体の奴は自覚してんじゃないかな。稀に中学卒業ギリギリくらい迄能力が発現しない奴も居るらしいけど、そういう奴は更にチートα‬になるらしい。 ‪α‬ってだけで既に勝ち組ではあるけど、出来ればチートになりたかったよなぁ。だってどうせなら一番テッペンからの景色の方が見たいよなぁって思うじゃん。 小学校では公立だったからからか、他の‪α‬は少なくて対等に話の合うような奴が居なかった。中学からは親父の母校に受験で入って、高校迄はエスカレーター。有名私立だったからそこそこ‪α‬も居て、でも、何てのかな。‪α‬ってあんまり群れたがる奴居ないんだよな。こっちが近寄ってっても、こう…壁がある奴が多いんだよ。 孤高を保ちたいんだかよくわからないけど。 それで言うと俺は‪α‬の中では結構フレンドリーな方だと思う。お高くとまってないように見えるのか、βがめっちゃ寄ってくる。お陰様で遊び相手には困らなかった。男友達も女友達もセフレもたくさん居たよ。 βなんか、都合良く使ってなんぼだからな。 お高くとまってなくても、内心はβなんか見下してた。それは今でもそう変わらないな。 まあ、話を戻すけど。 とにかく進学先の中学から上がった高校で、俺は出会っちゃったんだよ。今に至る迄の腐れ縁になる、悪友に。 そして最悪にも、俺はそいつに一目惚れしてしまった訳だよ。 でも、もっと最悪な事を言うと、実はそいつも‪α‬だったんだよな…。 しかも、その悪友・尾崎 一誠は、俺と張るか、俺以上にとんでもない野郎だった。一つの誠、なんて。今考えたらとんだ名前負けだ。 尾崎は外部受験で入ってきた奴だった。α‬って事で、当然入学式から目立ってた。‪しかも、尾崎のルックスがまた凄かった。 褐色の肌に焦茶の髪、目は明るめのヘイゼル。凛々しい顔立ちで身長もあるし、目立つったらなかった。見とれちゃったよ、あんまりカッコ良くて、綺麗で。 まるでアラビアンナイトの王子様みたいだった。 俺も見た目には自信があったけど、幾ら整ってるって言っても所詮は日本人的な見た目だから、尾崎のワイルドなルックスがマジで羨ましかった。筋肉が映えるんだよな、褐色肌って。 母親が中東の出身なんだって後から知った。 でもそんな凛々しい王子様があんなヤリチン野郎だとは思わなかったけどな…。 見た目通りチャラい俺と、見かけによらずチャラかった尾崎とは、当たり前みたいにウマが合った。 好みのタイプが違うから遊び相手の女の子達も滅多に被らなかったし、‪その割りに好きなゲームやブランドなんかは共通してたりして、一緒に居て楽しかった。尾崎の隣は居心地が良かったんだ。 居心地良過ぎて、その内本気で欲しくなってた。 でも、それが無理なのもわかってた。 俺達はどちらも‪α‬。その内…出来ればΩを見つけて番になるか、さもなきゃβの中から女を見繕って、…とにかく、子供を作らなきゃいけないらしい。 人類の為に優秀な種を後の世に遺していくのが‪α‬の使命らしい。誰が決めたのか、知らないけどさ。 勝手に他人の人生を決めないで欲しいもんだ。 俺は‪α‬で、尾崎も‪α‬で。 ‪α‬同士じゃ、どう転んでも子供なんか出来ない。 尾崎は生粋の女好きだから男なんか相手にもしないだろうし、そんな奴にゴツい‪α‬男の俺が告ったって玉砕も目に見えてる。 よく、言わぬが花って言うだろ?だから俺も、この恋が自然に鎮火していくのを待とうと思った。 無駄に傷つく事も無いもんなって思いながら。 なのにある日、そんな俺の健気な決意を全部無駄にする出来事が起きた。
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