DOOMSDAY OF ARK

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 離れ行く地球に、太陽に、望郷の念に焦がれながら。人類の存続は始祖の肩に掛けられた。  一人の声の大きな資産家が、議論を持ち掛けた。今後我々がどう生きていくべきかについて。コロニーで初の会議が開かれた。まずは混乱を収めるために、有識者による会見が開かれた。  有識者曰く。幸い居住プラントに影響はなかった。コロニーは対称軸のまわりに回転させて、遠心力によって擬似重力を生み出している。すぐにコロニーが落ちてしまうようなことはないだろうという予測だった。しかしエネルギー源は太陽光である。太陽光は無限に届くが、発電できるほどの距離となると永遠には持続しないだろう。早急により効率的な蓄電池の開発が必要とされた。  続いて議題として挙げられたのは食料問題であった。宇宙食技術は向上し、地上とほぼ変わらない食事を提供することができた。だが一ヶ月間の滞在のために用意された食料は、余裕を持って三ヶ月分しかなかった。  農場プラントに持ち込まれた動物たちは名目上実験動物だったが、その中に宇宙産ブランドの称号を得るために資産家が金に物を言わせて乗せさせたものがあった。結果としてそれらが箱舟の役割を果たし、人類と言う種を今しばらく延命させる要因となった。  様々な国出身の人々の意見を集めるのは容易ではない。宇宙飛行士の選抜試験にはコミュニケーション能力が含まれる。特に一般人が多数を占める空間では何が起こるか? 言語が通じないことによるストレス。二度と祖国の土を踏むことが叶わないことへのストレス。圧力が生み出すものは即ち、フラストレーションの噴出である。  食料問題の最も簡単な解決方法は何か。口減らしである。自らを生かすために、他者を切り捨てることを選択したのだ。スペースコロニー初の殺人は、民主主義議会が決したのだった。  コロニーは保守点検を行わなければ維持できない。船外活動が可能な宇宙飛行士、そしてコロニーを維持するための科学者は口減らしの対象から除外された。即ち金に物を言わせて船に乗った一般人のうち、まず英語を解さない者がその対象と議決された。今や資本主義は意味を持たなかった。人類は混乱の最中にあった。人類は自らの保身しか考えず、生き残るために互いを殺し合った。結果として想定以上に多くの命が失われた。
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