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美衣子は手の中の小袋に目を向ける。
「開けていい?」
優樹が頷いたので、少し緊張しながら封を開ける。中を覗き込むと、ブルーのリボンがかかった小箱と封筒が一枚入っていた。
そっと取り出してリボンを解く。箱を開けた美衣子は喜びのあまり頬が緩む。そこにはダイヤと、美衣子の誕生石であるルビーがあしらわれた指輪がキラキラと輝いていた。
「かわいい……さりげなく私と優ちゃんの誕生石が並んでる……」
「うん、だから選んだんだ」
「こんなに嬉しいプレゼントってないよ……」
それから袋の中の封筒の存在を思い出し、中身を取り出す。その瞬間、美衣子は更に言葉を失った。
「ねぇ……これって……」
半分に折り畳まれていたのは婚姻届の用紙だった。優樹の顔を見ると、両手で顔を押さえて、天を仰いでいた。
「ごめんね……ちょっと重いかなぁって思ったんだけど……でもずっと考えてたんだ。いつかみーちゃんと一緒になれたらなって……だからさっきの様子を見て焦って、なんか俺の気持ちだけでフライングしちゃったかも」
首を横に振る美衣子の髪を、優樹の手がそっと撫でる。彼は恥ずかしそうにはにかみながら、優しい瞳で美衣子を見つめていた。
「いつかの予約だけさせてもらえたら嬉しいんだけど、どうかな? 俺にはその返事が最大のプレゼントなんだ」
「……いつかは嫌」
「……ん? それってどういうこと?」
首を傾げて固まった優樹の方へ、美衣子はグイッと身を乗り出す。
「今すぐ優ちゃんが欲しい。今すぐ優ちゃんと一緒になりたい」
「ちょっ、みーちゃん⁈ そ、それはまだ……ほら、みーちゃん学生だし……」
「学生結婚だなんて、私らしくていいと思わない? だって子どもの頃から優ちゃんだけだもん。優ちゃんがそばにいてくれたら、きっとなんでも頑張れると思う。ダメ?」
「ダメじゃない……けど……や、やっぱりダメ!」
「なんで⁈」
「……ちゃんと順序は踏もう。ご両親に挨拶して、それから……例えばみーちゃんの卒業に合わせて……とか、ねっ?」
「……わかった。約束だよ。でもこの指輪は毎日していい?」
「もちろん」
「……今日お家に行ってもいい?」
「……門限までね」
「うん。ギリギリまで一緒にいたいの」
「ちゃんと家まで送るよ」
それから優樹は指輪を取り出すと、美衣子の左手の薬指にはめる。
「みーちゃん、俺と結婚してくれますか?」
美衣子は嬉しそうに顔を綻ばせる。
「はい! よろしくお願いします」
二人は恥ずかしそうに微笑み合う。そして美衣子は眩しそうに指輪を眺めると、大切そうにぎゅっと抱きしめた。
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