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第二話 アンサングヒーロー
「幸運を祈る」
天界の仲間から最後に言われた言葉がそれだ。
罪を免れるには下界に来るしか選択肢はなかった。
上にいた日々をまるで昨日のことのように思い出す。
この世界に来たところで路頭に迷うことは明々白々だったが、目の前の人間は迷いもせずに自分を助けた。
正直彼の顔つきを見ると正義感からというよりもただの不用意な行動だったようだが、僕の何かが彼を頼ってみようと思った。
人間の思考の回路というのは複雑そうだというイメージがあったが、幸いこの人物は単純そうに見える。
「まさか僕を置き去りにしたりしないですよね」
「うっ・・・」
人の頼みを断れない性格らしい彼は、困った顔をすると僕を彼のシャツの胸ポケットに入れた。
「とりあえず家で怪我の手当てをしよう」
ポケットの中で、大きく揺さぶられながら彼のぬくもりを感じた。
天界の仲間たちのことを考えながら、今日は久しぶりにゆっくりできそうだとほっとした。
なんだか眠くて仕方がない・・。
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