お手!

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「そう言えば、このポメちゃんの名前は?」 俺を抱き抱えながら、凛さんが城矢にそう尋ねた。 「名前は……ナナちゃん」 「え? 恋人と同じ名前?」 「あっ、いや! ナナちゃんじゃなくて、その子はえっと……ナッちゃん!」 「ナッちゃんかぁ! よろしくね、ナッちゃん!」 そう言って、凛さんが俺の身体をもふもふと優しく撫でる。 いつもなら撫でられることで満たされて人間の姿に戻るが、やはり今はそれどころではなく、撫でられても緊張状態が続いている。 逆を返せば、この調子ならうっかり人間の姿に戻って正体がバレる心配は低そうだ。もちろん油断は出来ないが……。 「ナッちゃん可愛いねえ。あ、男の子なんだねぇー」 「ちょ、姉ちゃん! ナッちゃんのそんなとこ見ないでよ!」 「え? 別にいいじゃない。何をそんな怒ってるのよ」 「そりゃ怒るでしょ!」 いや、城矢!不自然! ちなみに俺自身は、犬の姿で足の間を見られるのは不思議とそこまで恥ずかしくはない。 城矢と凛さんがそんな話をしていると、近くにいた子供達が寄ってくる。 「ワンちゃん可愛いー!」「触らせてー!」と、若干もみくちゃにされながらも子供達にもふもふと触られたが、子供達が嬉しそうだから良しとしよう。 ……でも、いつまでもこうしているわけにはいかないし、やっぱり早く人間に戻りたい……‼︎
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