待て!

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足元に落ちた袋を拾い上げてから、俺は母と向き合う。 「……どうしたの、急に来て」 「ちょっと顔見たくなっちゃったから」 ……そんなことを言いながらも顔は全然笑っていないから、何だか奇妙だ。 しかも、まるで思い付きでふらっと立ち寄ったかのような言い方だが、実家から東京(ここ)までは公共機関を使って四時間以上は掛かる。 更に、母とこうして直接会ったのは数年振り。スマホで連絡を取ったことすら、二年も前のこと。 絶縁したわけではないし、この自宅アパートの住所は一応伝えてあったので、家に来るなということではないのだが……一体、何の用事があって東京まで来たのだろう。
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