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だからというわけでもないけれど、俺は城矢に向けて頭を下げ、謝罪した。
「城矢、ごめん。その、今日は……」
「あっ、うん。大丈夫!」
城矢は笑顔で明るくそう答えてくれた。
「本当にごめんな。焼き鳥、さっき落としちゃったけど食べるには問題ないと思うから、城矢の分は持って帰って」
「ううん。ナナちゃんがお母さんと食べなよ」
「あ……じゃあ、ありがとう……。ビールは城矢が持っていって」
「いいの?」
「うん」
焼き鳥はまだしも、母と仲良く酒を酌み交わすような気分ではなかった。
「じゃあ、俺はこれで。七生君のお母さんも、お休みなさい」
城矢が会釈すると、母も城矢に向けてにこっと微笑みながら「ごめんね。気を付けて帰ってね」と返した。
城矢がアパートの階段を降りていき、その姿が見えなくなってから、俺は母と一緒に家の中へ入った。
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