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仕事が終わって帰り支度をしていると、城矢がいつものように「ナナちゃん、帰ろう」と声を掛けにきてくれた。
「うん。帰ろう」
「夕飯、どっかで食べてく？」
「あ、ごめん……今日は用事があるから」
今はあまり、城矢と楽しく過ごせる自信がなかった。
どちらにしろ駅までは方向が同じなので、俺達は一緒に事務所を後にし、駅に向かった。
ーー…
「じゃあ、お疲れ。また明日な」
電車が城矢の自宅アパートの最寄り駅に着いたのでそう告げたが、城矢は座ったまま立ちあがろうとしない。
「城矢？」
「ごめん。もう少しだけナナちゃんと一緒にいたくて」
「え……」
「いい？」
そんな風に聞かれたら、嫌だとは答えられなかった……。
俺は静かに頷き、そのままあと二駅分、一緒に電車に揺られた。
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