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「じゃあ、また明日」
電車を降り、ホームで城矢にそう告げる。すぐに逆方面の電車が来るはずだ。
けれど俺が城矢に背を向けた直後「やっぱり待って、ナナちゃん」と、後ろから城矢に手を掴まれる。
顔だけ振り向くと、城矢は困ったような表情で俺を見つめながら、こう言った。
「やっぱり、少しだけ話せない? 家までは行かないから」
「……ごめん。用事があるから……」
用事なんて、もちろんない。だけど、これ以上城矢と一緒にいたら、何でもかんでも甘えてしまいそうで怖かった。
それでも城矢は俺の手を掴んだまま離さず、こう続けた。
「今日のナナちゃんは、放っておけない」
「え?」
「他の人は気付かなくても、俺にはバレバレだよ……ナナちゃんが無理してること。お願いーー俺の前では無理しないで」
「……っ」
……ヤバい、どうしよう。
「……ひっく」
家庭の問題なんかで城矢に迷惑だけは掛けたくなかったのに、思わず涙が溢れてきた。
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