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「そんな……何を怖がる必要があるの?」
「だって……恋人が犬に変身するなんて、気持ち悪いだろ?」
俺は普通の人間じゃない。だから、父親だって家を出て行ったのだろう。
城矢がいつか俺から離れていくなんて、想像しただけで怖くて震えそうになる。
こんなに好きなのに……。初めて好きになった人なのに……。
こんな俺を好きになってくれた優しい人なのに、傷付けたくないーー。
だけど、そんな俺に城矢は優しく微笑みながら、こう言った。
「気持ち悪いなんて、そんなこと思うはずないじゃん」
「でも……」
「寧ろーー」
言葉の途中で、城矢の右手が俺の頬を優しく包み込んだ。
こんな状況なのに、自分の心臓がトクンと脈打つのを感じる。
そしてーー城矢は笑顔でこう続けた。
「人間の姿と犬の姿、ダブルで可愛いなんて俺の恋人は世界一じゃない⁉︎」
え……えぇ?
「バ、バカ、何言ってんだよ……」
「思ったこと言っただけだよ? そんなにバカかな?」
「バカだよ……。でも……」
でも、嬉しい。
「……ありがとう」
あ……俺、ようやく笑えた。
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