待て!

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「え?」 両親の離婚は俺のせいじゃ……ない? 思わず言葉に詰まる俺に、母は言葉を続ける。 【……七生が生まれる前から、単純に夫婦の間で喧嘩が絶えなくて……。生まれる前からの話だから、あんたがポメガだってことはもちろん関係なかった】 「……」 【七生が産まれた後もそんな関係が変わらなくて、離婚したの。……一昨日は、ついカッとなって事実とは違うことを言ってしまって……さすがに、申し訳なかった……】 「……」 母の言葉の最後の方は声が小さくて聴き取りにくかったけれど、それでもしっかりと耳に届いた。 「……何で、急に本当のことを話そうと思ったの?」 【……分からないわ】 「そっか」 【……強いて言うなら、あんたがいつの間にか私の手の届かない存在になっていたから、かしら】 「?」 【きっと、大切な人とやらのお陰ね】 母の言葉の意味がいまいちよく分からなかったが、昔の俺とは違うみたいな意味かな。 ……もしかしたら、これ以上は俺の気を引けないとか、そういう意味なのかもしれない……。 もしそうだとしたらーー母にとって俺は、多少は必要な存在だったのかな。 まあ、そうだとしてもそうじゃなくても、どちらでもいいんだけど……。 「……じゃあ、父親が不倫してたっていうのも、もしかして嘘?」
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