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「そんな。俺は何もしてないよ」
「それでも、ありがとう」
そう伝えると、城矢は照れて困ったような、だけど嬉しそうな顔を俺に見せてくれた。
そして、こんなことを言うのだ。
「ナナちゃん、キスしていい?」
「え? い、いや、ここ職場だし……」
「お昼休憩中だから、大丈夫」
「意味分からなーーんっ」
目を瞑る間もなく、城矢に唇を重ねられた。
触れるだけの優しいキスは、一瞬重なっただけで、すぐに離れた。
それでも、俺の心臓をバクバクと派手に動かすにはじゅうぶん過ぎるほどの威力だった。
……あ、
ヤバいっ。
「あっ、ナナちゃん!」
「しまった!」
ドキドキのしすぎで⁉︎……ポメ化してしまったぁ⁉︎
「だ、誰も見てないよな⁉︎」
「うん、大丈夫。でも、ここにいたら誰かに見つかるかもしれないから……いったん外に出ようか」
「ご、ごめん……ありがと……」
城矢は「気にしないで」と笑顔で答えてくれてから、俺の身体を優しく抱っこした。
ああ、俺は何でこうなんだ。肝心なところで締まらないというか……。
結局、城矢に迷惑ばっかり掛けてるじゃん……。
と、しばらく項垂れていたが、ふと顔を上げると城矢がやけにじーっと、俺の姿を見つめていることに気付いた。
「城矢?」
「はあ……。このモフモフ感、相変わらず最高……」
「え?」
「やっぱり……俺の恋人は世界一可愛いっ‼︎」
「ちょっ⁉︎」
遠慮なくギューッと強く抱き締められて、苦しい!
だけど、苦しいのにどこか嬉しくて……。
ーー城矢がモフモフを喜んでくれるなら俺、ポメガで良かったかも……?なんて、ずっとコンプレックスだったポメガをそんな風に思ってしまうくらい、俺は城矢が大好きなんだよな。
「……でも、早く人間の姿に戻りたい」
「うん……でもせっかく昼休憩中だし、もうちょっとだけモフらせて」
「……ちょっとだけな」
「ありがとう〜。はあ、このモフ感、幸せ……」
……俺も幸せだよ。
城矢と一緒にいれば、いつだって、どこでだって、俺は幸せでいられるのだ。
これからもよろしくな、城矢。
とりあえず、今日は思う存分モフってくれ。
End
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