わん

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「うん。俺自身が言っても信じてもらえるか分からないけど……根も葉もない噂だよ。ネットでその記事を書いたライターが、高校の時の先輩でさ。当時、先輩が付き合ってた彼女が俺のこと好きになっちゃったらしくて、それがきっかけで別れたみたいなんだよ。その時のことを未だに恨まれてたみたいで、今になって腹いせに俺の悪評書いたみたい。あ、その彼女さんとはもちろん付き合ってなかったよ」 「そう、だったのか……」 城矢は特に気にした様子もなく、いつものように明るく笑いながら話している。 まさか、根も葉もない噂だったなんて。 ネットでの悪口なんていちいち気にしてても仕方ないから、と城矢は言う。 強いな。 俺だったら、そんなことがあったらいつまでも引きずってしまいそう……。 「まあ無理に信じろとは言えないけど、信じてくれたら嬉しいな」 「……」 城矢とはもう結構長い間一緒に働いているけれど、こいつのことは未だによく知らない。その理由は、俺がいつも一方的に城矢を避けていたから。 城矢はいつも、俺に話し掛けてくれていたのに。 ……今は、城矢のことを、もっと知りたいなと思っている。 だから、信じてみたい。
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