くーん

8/42
前へ
/192ページ
次へ
程良く酒が進むと、城矢の対角線上に座っていた沢田さんが、 「城矢君、こっち来てぇ〜!」 と声を上げる。 見るからに、沢田さんは既にかなり酔っ払っている様子だ。 困ったように笑う城矢は、俺のことを気にしてか、自分の席から動こうとしない。 「沢田さん呼んでるぞ。行ってやれって」 「え、でも……」 「俺のことはいいって」 常に隣にいると言ってはくれたが、さすがにそれは申し訳ない。 それに、普段よりは美味しくビールが飲めているせいか、心配していた居心地の悪さもほとんど感じていない。 「じゃあ、ちょっと行ってくるね」 「おう」 城矢が席を立ち、沢田さんの隣に座り直す。 するとーー。 「甲斐君、飲んでる?」 城矢とは逆隣に座っていた、浅間(あさま)さんという男性社員から声を掛けられた。 「は、はい。酒、強くないので、少しずつですけど」
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1178人が本棚に入れています
本棚に追加