くーん

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「ナナちゃん、いる?」 玄関の外から聞こえてきたのは、城矢の声だった。 な、何で城矢がここに⁉︎沢田さんと一緒にいるはずだろ⁉︎ そもそも何で俺の家を知ってるんだと驚いたが、そう言えば俺がポメガだってことが知られたあの日、家まで送ってもらったもんな……。 電気が点いているから居留守は難しいかと思い、とりあえずドア越しに「し、城矢、何でここに……?」と尋ねると……。 「うん。あのさ、ゆっくり説明したいし、上がっちゃダメかな? ここで話してても近所迷惑になりそうだし……あ、二人で飲み直す用の酒も買ってきたよ」 「え? えっと……」 ドア越しにもかかわらず、城矢を想像して抜いた直後だという罪悪感と羞恥心に襲われる。 それに、説明って何だろう。沢田さんとの関係についてなんて、聞きたくない気もする。 ……それなのに、それ以上に城矢に会いたいと思う自分がいた。 撫でてもらって人の姿に戻りたいからとかそういうのじゃなくーーただ単純に、城矢の顔が見たかった。 「う、うん。ちょっと待ってて」 そう言ってから、俺は玄関扉前で精一杯ジャンプし、鍵を開けた。 鍵が開いた扉をゆっくりと開けた城矢は、そこにいた俺の姿を見て驚いていた。 「ナナちゃん! 何でその姿に……」 「いや、その……」 お前に会えなくて寂しくて変身してしまったーーとは口が裂けても言えなかった。
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