くーん

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高校を卒業する少し前に、その友人から『一緒に東京に進学しないか?』と誘われた。 ポメガの俺を地元に置いていくのが心配だったというのもあると思うが、卒業しても今まで通り会いたいからと言ってもらって、凄く嬉しかった。 それに、俺も同じ気持ちだった。何より、母と離れて暮らしたいと思った。 仕送りはいらないから上京させてほしいと母に伝えたところ、母は意外にもすんなり了承してくれた。 驚いた。母から離れることは許されないと思っていた。もしくは、東京までついていくと言われてもおかしくないと考えていた。 だけど、よく考えてみたら非常に納得した。何故なら、地元から遠く離れた東京で俺がポメガだとバレようと、母が後ろ指を指されることはないーー東京で俺がどうなろうと、母には関係なかったのだ。 実際、それまでの干渉が嘘のように、俺が上京してからは母からの連絡は滅多に来ない。 連絡先は知っているし、絶縁とまでは言わないが、基本的にはお互いかかわることはない。 最後に母からの連絡が来たのは、二年前に母が再婚した時だった。 ただ、再婚相手には会わなくていいと言われ、その時も実家には帰らなかった。 そんな感じだから、最後に実家に帰った日がいつだったか思い出せない。もう二度と帰らない可能性だってある。
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