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約束の土曜日。
午前中に城矢と駅で待ち合わせをし、俺達はそのまま映画館へと直行。まずは映画を堪能した。
映画は期待通り、いや期待以上に面白かった。
スカッとするという前評判のアクション映画だったが、最後は感動して、うっかり泣きそうになった。
「クライマックスの、相棒を助けるために迷いなく崖から飛び降りるシーン最高じゃなかった?」
映画館を出て、昼飯を食べる店を探して街中を歩きながら、城矢が先程の映画の感想を話した。
「さ、最高だった。その後の台詞も良かったし……」
「分かる! 最後とか、俺うっかり泣きそうになっちゃったよー。バレなかった?」
「はは。うん」
城矢も泣きそうになってたのか。それなら俺も、無理して堪えなくても良かったのかな、なんて。
映画を観た後、こうやって感想を言い合えるのって楽しい。
それに、城矢は俺とは正反対な人間だとずっと思っていたけれど、こうやって話してみると意外と感性が似てて、共感出来ることも多い。
だから一緒にいて凄く楽しいーーけど、だからって恋愛的な意味で好き、ということには……ならないか。難しいな……。
……ていうか、さっきからすれ違う女の子達が皆、チラチラと城矢を見てくる。
誰が見たってイケメンだもんな。オーラもあるし。
それに、城矢は若手のデザインコンテストなんかでも賞をたくさん獲得していて、ネットでも〝期待の若手デザイナー〟として顔写真が掲載されたりしている。だから、城矢のファンだという女性は実際に凄く多いのだ。
そんな城矢の隣にいるのがこんな俺で本当にいいのか?って改めて思うわー。俺なんか、地味だしモサいし、たまに犬になるし……。
「ナナちゃん、お昼は何か食べたいものある?」
城矢からそう尋ねられ、俺はハッと我にかえった。
「えっと、れ、冷麺」
「お、いいね! 俺も冷麺好き!」
……自分に自信なんてないけど、今は卑屈になるより、城矢とのデートを楽しみたい!
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