わん

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「ナナちゃん、どうかした?」 ボーッとしていたら、いつの間にか城矢の美形が目の前でドアップに映り、驚く。 「わっ! か、顔、近……」 「あ、ごめん。つい」 「て、ていうかさ、その、ナナちゃんって呼ぶのやめない……? 女の子みたいだし……」 「駄目? 俺、ナナちゃんともっと仲良くなりたいと思ってるから、あだ名で呼びたいなって思ったんだけど」 「え……」 も、もっと仲良くなりたいって……こんなハイスペ人間が、何で俺なんかを相手にそんなこと思うんだよ……。 何か裏でもあるのか? 「……俺なんかと仲良くしても良いことないよ」 ちょうどおにぎりを食い終えたので、俺はゴミをまとめて椅子から立ち上がる。 そのまま制作室に戻ろうと、城矢に背を向けるとーー。 「待ってよ。もっと話そう?」 「え、ちょっ⁉︎」 突然、城矢から腕を掴まれ、制作室に戻るのを阻止された。 腕を掴まれたことにも驚いたが、それ以上に、〝もっと話そう〟と言われたことに驚いた。そんなこと、今まで誰にも言われたことなかったから。
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