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上着?と、城矢が目を丸くする。
「それは全然いいけど……何で? もしかして寒い? だとしたら、こんなペラペラの上着じゃ役に立たないと思うから、暖かそうな毛布とか買ってくるけど……」
「さ、寒いわけじゃないんだ。だから貸してほしい……」
「よく分からないけど、これが必要なら」
城矢はサッと上着を脱いで、笑顔でそれを手渡してくれた。
……城矢の上着が手元に来た瞬間、ホッと安心感のようなものに包まれた。
「……ありがとう。必ず洗って、返すから」
「え? いいよ、洗濯なんて」
「い、いや、めちゃくちゃ洗うから。それじゃあ、また職場で……」
「うん。何かあれば連絡してね」
「ああ……」
心配そうな表情でこちらを見つめてくれる城矢の顔を見ながら、俺はゆっくりと玄関の扉を閉めた。
とりあえず、薬……。
薬を飲んだら、布団敷いて、とにかく寝よう……。
体調はすこぶる悪いし、城矢とのデートも中断になってしまってガックリしていたが……城矢の優しさと上着の匂いに、その後いつまでも癒されていたのだったーー。
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