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「ああ!ごめんなさい!私ったら!二人きりだからって、つい変なテンションになっちゃったわ!」
その弁明は果たして私の警戒心を解くのに必要な言葉だったろうか。
「実は私、あなたのファンなの!推しなの!アレなの!」
警戒心、ますます増す一方だった。
アレて…?
「その綺麗だけど周りに存在感を与えない素朴な三つ編み!くりくりとした愛らしい三白眼に似合わない地味眼鏡!スタイルは良いはずなのに敢えて露出を控えて陰キャの如く自信なさげに前屈みでいるキュートな猫背姿…」
「バカにしてます?」
ディスってんのかと軽蔑の眼差しを向けてみると、彼女の目は輝いていた。
真剣そのものだった。
マジでそんな事思ってんの?
詳しく説明されても、どれも自分にとって魅力とかこれっぽっちも思っちゃいないんだが。
「とりま、連絡先でも交換する?」
「何でですか嫌です」
気持ち悪いナンパ店員に私は迷いなく即答で断りを入れる。
さっきからコイツ自分勝手に言いたいこと言ってんな…。
「あはは冗談だよ〜」
店員が誤魔化すように笑い出す。
「こんな下手な芝居を間に受けるなんて、お姉さんキミの将来が心配になっちゃうぞ☆」
じゃあそのスマホに開いているラインのQRコードは何だ?
がっつり取る気満々じゃないか。
「コンビニ店員歴○年勤めております。船守苗子です。よろしくお願いします」
「お見合いみたいにぐいぐい距離を詰めてくるのもやめて貰えます?」
「あはは。だから冗談だってば〜」
「だったら今も開いてるQRコードは何なんすか!」
触れないようにしてたが机中央にずっとスマホがスタンバってんだよ!
食い下がってくるよ!諦めが悪すぎるよこの店員!
もう身の危険しか感じないよ!
早くこの部屋から出たい。
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