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「そう…断るのね。仕方ない」
そう言って店員はゆっくりとスマホを……焦らすように自分の方へ下げていく。
もういいから。私の心は揺るがないからさっさとしまえ。
「実はあなたを呼んだ理由は二つあるの」
残念そうにやるせない気持ちで店員はちゃんとした本題へと移ろうとする。
何で二つあるのかとつっこみたかったが、また無駄な時間を取りそうだと思ったので聞くのはやめた。
「一つ目は、この店はよく…地味に万引きに遭ってるのよ」
地味を絵に描いたような私を見て、店員は続ける。
「あなたが来る日は特に、地味に万引きが起きてるの」
「……」
ひょっとして私は疑われているのだろうか…
「あなたは心当たりはないかな?そういう不審な行動をしている人を見かけたりとか…」
「…っ?」
いや、違う。
これは事情聴取か?
カメラではうまく死角を捉えられないから、敢えて私に聞きにきたって事か。
「えっと…ごめんなさい。分からないですね」
私はあまり周りに興味がないから、こういう時役立たずなんだよな。
残念ながら力にはなれないよ、変人の店員さん。
「……」
私の返しに、店員は何故か少し寂しそうな表情をした後、
「そう……ありがとう」
と憤りを感じないお礼をしてきた……ような気がする。
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