4人が本棚に入れています
本棚に追加
「若さ故の過ちってやつだよね?
誰もあなたを悪者に仕立てようなんて思ってないから。これまであなたの行動を見過ごしてしまった私達の責任もあったりするんだから」
そんな優しい言葉をかけないでくれ。
我慢して溜めていた涙も、溢れてしまったじゃないか。
「親御さんには、『今回が初めて』というていでお伝えしておくからね」
「……ごめんなさい…!」
この店員は、きっと私から白状するのを待っていたのかもしれない。
それなのに私は店員から与えてくれた自白のチャンスを無下にしてしまった……クズにも程がある。
今の自分には、親の怒りだけでは物足りないようにも思えてきた。
*
親……父親が来たのは、仕事終わりの晩の八時ごろ。
店員の前であろうとお構いなしに、父は私の頬をぶってきた。
これには流石に他にカウンターにもいた店員も驚いて何事かという感じで部屋に入って仲裁に入る。
親は後々になって、我に返って反省する。
今回の親は、私から見ればまだ優しく思えるよ。
そしてお灸を据えられて三十分ちょい、私は父の車で帰る事になった。
二人きりになるのが一番怖いんだよな…。
「今日は散々な一日だったね」
送り迎えのように、あの変な店員が私の最後を見届けようと外に出てきてくれていた。
私は、先に車に乗ろうとする父に、待っててと、手でジェスチャーを送ってから店員に振り返る。
「あの…お姉さん」
深くお辞儀をして、私は言う。
「ごめんなさい。それとありがとう…私を庇ってくれて…」
私は最後の最後に店員の目も見れず、ただ下を向きながらこれまでのやらかした行動を反省する。
「いいんだよ。だけど、もうやっちゃだめだよ。小さな恋泥棒さん♪」
「まだそのボケ続けるつもりですか…」
さすがにもう肉体的にも精神的にも疲れてしまっていて、鋭いツッコミをかますことは出来なかった。
そんな私に店員は「おつかれさま」と頭を撫でてきて、
「またお気に入りの雑誌が発売されたら、いつでも来てちょうだいね♪」
そう言ってあの変な店員は、ようやく私のそばから離れてくれた。
ずっと何かを期待してスマホを握りしめながら…。
なんか締まらないなぁ。
そんなに欲しかったのか、私の連絡先が。
やれやれと思った。
また来た時にでも……私からお願いしてみようかな…。
借りがあるわけだし。
……というのは口実で。
私も私で、あの変な女店員に、何か大変なものを盗まれてしまったかもしれないようだから…。
最初のコメントを投稿しよう!