⑤ 衝動なのか理性なのか

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⑤ 衝動なのか理性なのか

急に、由梨は遠くに目をやりながら言った。 ボク「こんな晴れてるのに?」 由梨「田舎には良くある事」 ボク「もしかして予言者?笑」 由梨「そんなわけないじゃない!笑」 ボク「だよな」 由梨「何度か経験してるから」 ボク「雨にあたる前に帰ろうか」 由梨「まだ降らないよ」 ボク「それもわかるの?」 由梨「なんとなく」 ボク「いい加減だなぁ」 それから何を話していたのかはあまり覚えていない。 何分くらい経ったのかわからないが、 急に雲行きが怪しくなった。 ボク「もう帰ろう」 由梨「そうしようか」 2人がベンチから立ち上がると同時に強烈な雷が鳴った。 由梨の戻る場所は目と鼻の先だが、 ボクが戻る家には距離がある。 出来れば雨に濡れたくなかったから、 早く由梨を帰して、 それを見届けたらボクも急いで帰るつもりだった。 雷は予想以上に激しく鳴り続けている。 ボク「早く家に入らないと」 由梨「怖い…」 ボク「雷?」 由梨「うん」 ボク「落ちたりはしないさ」 由梨「音が」 ボク「耳塞いでおいたら?」 由梨「うん」 ボク「ちゃんと帰るまで見届けるから早く帰んな」 由梨「うん…」 大きな木陰から2人が出た瞬間、 近くの畑に稲光が落ち、 一瞬目が眩んだとともに、 ボクに振動が伝わった。 途端に豪雨となり一足先に木陰から出ていた由梨は、 一瞬で全身びしょ濡れになり、 足を止めて打たれ続けている。 ボク「由梨!早く帰れ!」 由梨「いいの…」 ボク「何言ってんだ!じゃあこっち来い!」 由梨「いいの…」 ボク「何で!」 由梨は白い線のように真っ直ぐに降り注ぐ雨に打たれているのに、 微かに微笑みながら動かない。 少し恐怖のように思った瞬間、 ボクは何故か由梨の元に向かっていた。 同じ雨に打たれながら、 必死に抱きしめた。 恋愛感情とはちょっと違う、 義務感のような責務感のような行為だった。 ボクは雨に打たれる由梨の両頬に手を当て、 軽くキスをした瞬間、 ボクの眠れる感情が一気に吹き出し、 無我夢中で激しいキスを続けた。 由梨は何も言わない。 拒絶もしない。 雨に打たれ続けている事も、 初めて会った2人だということも、 もしかしたらどちらかの親が迎えに来るかもなんてことも、 一切思考に無く、 ボクは由梨の唇を奪い続けていた。 気がつくと、 既に雨は上がり、 一転静かな夕焼けに染まる景色に2人が居た。 冷静になったボクが由梨と目を合わせると、 由梨「叶った」 ボク「何が?」 由梨「願い事」 ボク「これ?」 由梨「帰ろ!」 ボク「…わかった」 由梨「じゃあまた」 ボク「また明日待ってる」
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