彼女の天職

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 だけどじっと目をこらして探し続けることができたら、あるいは、見つけてくれる誰かに出会えたら。見つけられないことはない。可能性はゼロじゃない。  自分をあきらめないことが、大切だ。僕は飯田さんに、そう言いたい。 「そうかも。考えてみます」  と、飯田さんは言った。 「ありがとうございます」  とも。  飯田さんはにっこり笑った。  うん、合格。  僕は心の中で飯田さんを採用した。店長でもないのに。  僕の思いは、伝わったのだろうか。  飯田さんは、すてきな文房具を集めるため、世界を旅することにしたと言った。 「えっ……世界、一周?」 「はい。世界中のすてきな文房具を集めて、文房具店を開くことにしました」 「文房具店を……開く……」 「気づいたんです。自分の店なら、いくら間違えて持って帰っても、大丈夫ですもんね?」 「あっ、そうか」 「はい」 「そっかぁ。そうなんですねぇ〜……」  ちょ〜っと、違うかなあ。僕の言いたかったこととは……。  しかし、飯田さんの顔はきらきらしていた。まるで進化した魔法使いのようである。心の穴は、修繕できたのだろうか。
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