彼女の天職

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「では、行ってきます。ありがとうございます、大野さん」 「おっ……」  大野さん。名前、覚えてくれてたんだ。  と僕がきゅんっ、としているうちに、すがすがしく飯田さんは店を出ていったのだった。サラサラの黒髪が揺れて、自動ドアが閉じていく。  がんばれ、飯田さん。  僕は自動ドアの向こうに、心からのエールを送った。  それにしても世界一周なんて、顔に似合わず大胆なんだな。飯田さん。  お金は、どうするんだろ。バイトしながら巡るって話も、聞いたことあるけど。 「……あ」  まさか、前職で横領って、本当に……?  いやいや、まさかまさか。  飯田さんに限ってそんなことは。 「……。」  ……ちゃんと、文房具店が開けますように……。  あと、世界中の文房具めぐりならぬ、交番めぐりになりませんように。  飯田さんの指サックは、あともう少し残っている。ボールペンは入荷しました。  ご来店、お待ちしています。 おわり
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