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彼女がうちの商品を無断で持ち帰ろうとしたのは、これで三回目だった。
最初は事務所に誘導して、名前や連絡先を聞いた。二回目の時には、別の店員が注意するだけにとどまった。そして今回は三回目。さすがに悪質なので、警察も呼んで、事務所でじっくり追い込むことにした。
ボールペンごときで心が狭い、とお思いの方もいるだろう。しかし、いちおう僕はこの文房具店の古株だ。このようなトラブルにはしっかりと対応していきたいと思っている。決して、清楚な美人を密室に連れ込みたいなどと、思っているわけでは、ない。
「なぜまた、こんなことをしたんですか」
狭い事務机をL字型にはさむ形で、僕は飯田さんと向き合った。
「……すみません」
飯田さんはうつむき加減に謝った。
「あのね、これで三回目なんですね。小さいボールペンとはいえ、このようなことをされては困ります。警察に通報させていただかないとならなくなるんです」
「ごめんなさいっ。……私、」
「はい?」
「……私、やっぱり向いてないんです」
「ムイテナイ。何がですか」
「この社会に、ふさわしくないんです」
そう言って飯田さんは、じわっと泣きそうになった。
「ふぇん」
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