彼女の天職

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「私っ。仕事、向いてないんです。何で人間って、仕事ができる人もできない人も、みんな働かなきゃならないんだろ……ふぇ」 「おおっ……と、落ち着いて。お茶、お茶。お菓子もいりますか」 「あ……すみません」  なるほど、なるほど、精神が不安定でいらっしゃる、ってことね。だからって、じゃあ仕方ないね。とはならないけどね。  でも、何だかかわいそうだから、警察に突き出すことはしないことにした。 「もう絶対、持ち出さないでくださいね。次同じことをされた場合は、しかるべき措置を取らせていただきますから。お願いしますね?」 「はい。……すみません」  うるんだ瞳で見つめられると、ウッとなる。なるのだが、ここはぐっとこらえるのだ。 「う……こっ、このペンは!」 「えっ」 「あ、か……買いますか。買いませんかっ?」 「あ、あの……」 「?」 「……買いません」 「あ、買わないんですね……」 「はい……すみません」  しずしずと、うるんだ瞳は帰っていった。   「大野さ〜ん、どうでしたあの女?」 「え、あ、うん」  後ろ姿を見つめすぎていた自分に、ハッとなる。 「次はやらないって言ってたけど……」
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