彼女の天職

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「あ、それ、絶対次もやらかすやつですね。何してんですか、大野さん」 「だよな……」  手の中には、飯田さんが買わなかったボールペンがある。 「このペンの置き場所も、アレだったかなぁ」  念のため、ボールペンの置き場所を、レジからよく見える場所に移動させてみた。犯罪が起こらないよう、それなりに対策していることを、飯田さんに分かってもらうためだ。飯田さんが分かってくれたら、いいのだけど。  それが、こうなるとは。 「かわいい〜」 「え、ほし〜」 「それな〜」  レジ前に置いた結果、飯田さんが盗ったボールペンが、売れに売れたのである。  いや、盗ったから売れたのか、もともと売れてたから盗ったのか。どっちが先か、分からないが、朝のニュースであのボールペンが話題の商品と紹介された日には、思わずみそ汁をこぼしてしまった。  在庫がみるみるなくなっていく。 「売れ行き、やばいですね」 「うん……」 「何がバズるか、分かんないもんですね〜」 「だな……。これの何がよかったんだろ」 「あっ」 「ん?」 「あの女です」
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